第42回 Free Style Libreによる血糖測定

やさしい内科医のY’s TVチャンネル

YouTubeに『やさしい内科医のY’s TVチャンネル』というサイトがあって、糖尿病ではない内科医のやまむら先生自らが被験者になって、私たちの身近にあるものを食べたり飲んだりした時に、血糖値がどのように変化していくかを公開したものがありましたのでご紹介します。血糖値を10分ごとに測定し、元(食前)の血糖値に復するまでを追跡しています。

血糖測定にはFree Style Libreを使っております。

Free Style Libreとは

Free Style Libreとは、アボットジャパンから出ている血糖測定器で、上腕に円盤状(直径35mm厚さ5mm)のセンサーを貼り付け専用のリーダーを近づけることによってリアルタイムで血糖値(間質液血糖値)が測れます。センサーは2週間装着することができ入浴も可能です。1分毎に測定し、15分毎に血糖値を自動的に記録します。センサーのメモリーは8時間です。スマホ(2021年2月21日の時点ではiphoneだけ)にアプリをダウンロードすれば専用のリーダーの代わりになりクラウドで情報を共有すればパソコンでも情報が見られます。血糖値のデータは90日間保存されます。

身近なものを食した時の血糖値変化

では、私が視聴した順番で紹介していきましょう。

1.明治チョコレート3種の血糖値変化

ミルクチョコレート(エネルギー279Kcal、炭水化物27.7g、糖質25.9g)、チョコレート効果カカオ72%(エネルギー226Kcal、炭水化物17.8g、糖質13.1g)、チョコレート効果カカオ95%(エネルギー310Kcal、炭水化物1.4g、糖質0.6g)それぞれを、板チョコ1食分50gを食べ比較しました。

結果は以下の通りです。

 

 

ミルクチョコレートは約50mg/dl(53)、チョコレート効果カカオ72%は約30mg/dl(29)血糖値を上げましたが、チョコレート効果カカオ95%はほとんど血糖値を上げず横ばいでした。

ミルクチョコレート50gは食事1食分の血糖値を上げたことになり食べ過ぎに注意が必要です。

小腹が空いた時や口寂しい時はナッツやチーズと共にチョコレート効果カカオ95%がお勧めです。ただし、かなりビターです!

2.(ファミリーマート)コンビニおにぎり(ツナマヨ)1個食べた場合と2個食べた場合の血糖値変化

おにぎりシーチキンマヨネーズ1個(エネルギー232Kcal、炭水化物37.8g、糖質36.7g)

おにぎりシーチキンマヨネーズ2個(エネルギー464Kcal、炭水化物75.6g、糖質73.4g)

結果は以下の通りです。

おにぎり1個で約50mg/dl(51)、2個で約100mg/dl(95)血糖値を上げました。

食べ物によっては必ずしも食べた分だけ血糖値が上がるわけではありませんが、今回のおにぎりの実験では容量依存的に血糖値が上がりました。

また今回の実験では、おにぎり2個食べた時のように、糖質摂取量が多いと食前血糖値に戻るまで時間がかかる(3時間)ことがわかりました。

3.ローソンの海鮮恵方巻

ローソンの海鮮恵方巻1本(エネルギー287Kcal、炭水化物45g、糖質44g)

結果は以下の通りです。

恵方巻き1本で血糖値は60mg/dl上がりました。食事1食分です。

4.(王将)餃子6個とチャーハン

餃子(エネルギー333Kcal、糖質40.9g)

チャーハン(エネルギー431Kcal、糖質70.7g)

結果は以下の通りです。

餃子とチャーハンを合わせた糖質量は111.6gです。

被験者の先生もさすがに量が多かったようで、食べ始めから10分経って、まだ餃子3個とチャーハンが1/3残ってました。

食べ始めて50分後に血糖値163mg/dlとピークを迎え、一旦は下降するもの80分後から再度上昇し140分後までは130mg/dl台を維持しました。やがて血糖値は下降していき、3時間後にやっと108mg/dlに落ち着きました。餃子とチャーハンのように炭水化物が多く油で調理されたものは約1時間後と2時間後に血糖値のピークが見られるようです。

5.ビール一番搾りと糖質ゼロの血糖値変化

一番搾り500ml(エネルギー200Kcal、炭水化物13.5g、糖質13g)

一番搾り糖質ゼロ500ml(エネルギー115Kcal、炭水化物3g、糖質0g)

結果は以下の通りです。

一番搾りを飲んで血糖値は40分後にピークを迎え111mg/dlでした。血糖上昇値は29mg/dlとなります。飲み物の血糖値のピークは食べ物より早く30〜40分後が普通です。

一方、糖質ゼロでは血糖値は上がりません。どちらのビールを飲んだ場合も60分後から血糖値は下降傾向にあります。アルコールが体内に入ることにより、肝臓ではその代謝に追われ肝臓のグリコーゲンがブドウ糖に変えられ血中に放出される経路が滞るためと思われます。この時、強い空腹を感じます。ビールに含まれる糖質による影響よりも、むしろアルコールによる空腹感が過食をもたらし血糖値を上げることがあるのです。飲み過ぎに注意しましょう!

6.CoCo壱のカレー(ポークカレー)の血糖値変化

CoCo壱のカレー(ポークカレー)(ライス300g エネルギー755Kcal、炭水化物126.5g)

結果は以下の通りです。

食後70分で血糖値149mg/dlとピークを迎え、その後下降しますが100分以降はしばらく110〜120mg/dl台の血糖値が続き、4時間後にやっと100mg/dlを下回りました。カレーはご飯の他にカレールーも血糖値を上げますので食べ過ぎに注意が必要です。

7.サトウの切り餅2個の血糖値変化

サトウの切り餅2個(エネルギー236Kcal、炭水化物53.6g)

結果は以下の通りです。

たった2個の切り餅でも食後70分に血糖値は216mg/dlまで上がりました。その後、元の状態に復するまで3時間かかりました。

切り餅2個では炭水化物量はさほど多くない(炭水化物量53.6g)にもかかわらず餃子6個とチャーハンを食べた時(糖質量111.6g)やカレーライス(炭水化物量126.5g)を食べた時の最高血糖値、163mg/dlや149mg/dlをはるかに凌駕しました。食べ過ぎに注意が必要です。

8.ポカリスエット(500ml)の血糖値変化

ポカリスエット(500ml)(エネルギー125Kcal、炭水化物31g)

結果は以下の通りです。

ポカリスエットを飲んで40分後に血糖値は145mg/dlになりました。血糖値は69mg/dl上昇したことになります。スポーツドリンクと言えば聞こえはいいですが急激な血糖の上昇をもたらすので注意が必要です。

総括

1.食べ物は食後1時間程度で血糖値のピークを迎える。

2.飲み物の血糖値のピークは30〜40分後である。

3.中華などの炭水化物が多く油を使った食材の場合、血糖値のピークは1時間後と2時間後に見られる。

4.ビールに含まれる糖質による影響よりも、むしろアルコールによる空腹感が過食をもたらし血糖値を上昇させることがある。

5.カレーライスはご飯とカレールーに糖質が含まれ、元の血糖値に復すまで4時間かかった。

6.切り餅は糖質量の割にかなり血糖値を上げるので注意が必要である。

 

今回はあくまでも正常耐糖能(糖の処理能力が正常)の方が対象でした。糖尿病の方が対象であれば血糖値は今回の結果の数倍に跳ね上がったと思います。

血糖値の目標

私はこのFree Style Libreを活用し、第39回のブログで述べたように、糖化と酸化を防ぐにはできれば食後血糖値を140mg/dl以下にすべきと考えておりますが、少なくとも160mg/dl以下を目指すべきです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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