第56回 災害時の食事

災害時の食事

今回は、災害時の食事について取り上げますが、まず、糖質について復習しておきましょう。

糖質摂取で太るメカニズム

第25、29、30回のブログで、糖質摂取が肥満をもたらすことを取り上げましたが、もう一度振り返ってみましょう。

糖質で血糖値を上げるものは、ブドウ糖と蔗糖(砂糖)とでんぷんです。

でんぷんを摂取すると、唾液中のαアミラーゼの働きにより、麦芽糖(2糖類)に変化します。小腸に到達した麦芽糖はαグルコシダーゼの働きによりブドウ糖(単糖類)に変化し、小腸から吸収されます。

吸収されたブドウ糖は、血糖値の上昇をもたらし、これを受けて膵臓からインスリンが分泌されます。

インスリンの作用で余剰なブドウ糖は、中性脂肪に変化し、脂肪細胞に取り込まれ、太ることになります。

肥満はカロリーを多く摂るからの嘘

1970年代のアメリカでのアンセル・キーズ氏やジャン・マイヤー氏らの肥満はカロリーを多く摂るからとの「脂質悪玉説」に端を発し、脂質を制限する分、糖質を多く摂ることが世界各国に普及しました。

日本もこの間違った学説のせいで、肥満や糖尿病が増加したことは第29回のブログでも述べた通りです。

スウーデンも国家レベルで「低カロリー高炭水化物」政策を行ったおかげで、1985年からの15年でバターの消費は半分以下になり、肥満率は1.5倍に増加し、糖尿病も増加しました。

今ではこの政策の間違いに気づき、炭水化物を減らす方向に転換され、国民の4人に1人が糖質制限をしているそうです。

日本ではどうでしょう。「脂質悪玉説」が間違いであることがわかったのに、50年経った今でも日本糖尿病学会は「糖質配分を摂取カロリーの50〜60%が至適」だと言っております。

震災で肥満が増えた

2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震で肥満者が増えたとの報告があります。

被災地での避難所生活では、炊き出しによるおにぎりや自治体が備蓄していた食料がレトルトご飯、乾パン、備蓄パン、ビスケット、クラッカーなどの高糖質食品であったことから想像がつくでしょう。

また、救援物資として届いたものも、パン、カップ麺、お菓子、ジュースなどと高糖質のものばかりです。

熊本地震では小学生に肥満と共に虫歯の増加ももたらしました。

緊急時とは言え、今後の災害時には健康を考慮した食事の見直しが必要だと思います。

コロナ禍での食事

新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい、感染者は増加の一途で、入院者の増加はもちろん、自宅やホテルでの療養者が増えております。

自治体からの食べ物や飲み物の療養者に対する提供はありがたいですが、免疫能の維持のために、ビタミン、ミネラルが豊富で、低糖質、高タンパク質食品をお願いしたいものです。

笑えない話

私が糖尿病で診ている患者さんが、コロナウイルス感染症にかかった方の濃厚接触者とのことで入院していました(当時は入院できました)。

幸い、コロナの発症はなく、事なきを得たと思いましたが、糖尿病だと病院側に伝えたにもかかわらず、たくさんの米飯や高糖質メニューを出され、血糖のコントロールがつかなくなりインスリンを打たれていたと言うのです。

退院後、その患者さんに再度、低糖質栄養指導を行って、インスリンは止めて貰い、尿に糖質を排泄させる薬、SGLT2阻害剤を投与しました。

患者さんは、自分が糖尿病であるのに、こんなにご飯(米飯)を食べて良いのかと、その時の主治医に聞いたそうですが、食事のメニューの変更がなかったと嘆いていました。

決して、笑える話ではありません!

 

 

 

 

 

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