患者さん背景
患者M.Mさん、59歳、男性は、会社の検診で肥満、高血圧、糖尿病、肝機能障害を指摘され、2020年7月31日当院を訪れました。
来院時、身長174cm、体重93Kg、BMI30.7
血圧150/90mmHg
随時血糖 233mg/dl HbA1c7.9% GOT26 GPT44 γGT68
持参された以前の検診データ(2018/12/21、2019/12/20施行)を見ても、同程度の肥満を認め、高血圧、糖尿病、肝機能障害、高尿酸血症がありました。
糖質過剰摂取は生活習慣病を招く
初診の2020年7月31日に、
糖尿病や脂質異常症、高血圧症や脂肪肝などの生活習慣病は、主に糖質過剰摂取により起こることを説明しました。これらを放置すると、心筋梗塞や脳卒中に繋がります。
すなわち、糖質の過剰摂取により使いきれなかったブドウ糖は、インスリンの働きにより、中性脂肪に変換され、血中の中性脂肪の増加を起こし、コレステロールを運搬するLDL粒子は小型化し、超悪玉化します。その結果、動脈硬化を起こします。
糖質の過剰摂取による血糖値の乱高下も血管を傷つけます。
さらに、中性脂肪の増加は、内臓脂肪として蓄積され、肝臓に蓄積されれば脂肪肝になります。
内臓脂肪の蓄積は、摂食を抑えるはずのレプチンの効果を低下させ(レプチン抵抗性)、増加したレプチンとインスリンは交感神経の賦活化と水分貯留を起こし、高血圧をもたらします。
また、内臓脂肪の蓄積により分泌される悪玉アデイポサイトカインのTNF-αは、インスリンの抵抗性を高め、糖尿病をさらに悪化させ、アンジオテンシノーゲンは血圧を上昇させ、PAI-1は凝固系を更新し血管を詰まらせます。
糖質制限
糖質の主体は、私たちが主食としている炭水化物であり、この炭水化物を減らすことが大事です。
まずは、夕食からご飯を抜くことから始めましょう。
でも、ご飯を抜いた分、カロリー不足になったり空腹を感じますので、おかずを増やしてください。
おかずというのは、肉や魚、大豆食品、卵、チーズ、葉物野菜、きのこ、海藻類を言います。
缶コーヒーや清涼飲料水など余計な糖質を摂っているようであれば、お茶やブラックコーヒーに変えてください。
患者さんの劇的変化
患者さんは、その日の夕食から糖質制限を始め、なんと糖質制限は朝、昼、夕の3食に及び、8月24日来院時は、体重90Kgと3Kgの減少を認めました。
10月13日来院時は、体重87kg。随時血糖 83mg/dl。HbA1Cは、初診時の7.9%から6.3%に減少しました。
12月18日、会社の検診では、体重84.1Kg、BMI28、腹囲97cm。
肝機能を示す数値はすべて正常。空腹時血糖106mg/dl HbA1c5.8%と正常でした。
年が明けて、当院に2021年1月28日に来院されました。
来院時体重84Kg。随時血糖75mg/dl HbA1c5.7%でした。
血圧は、残念ながら、糖質制限しても降圧に至らず、同日から少量のCa拮抗剤を投与しました。
患者さんの改善点の総括
体重は初診時から6ヶ月で93Kgから84Kgと実に9Kg減少し、肝機能は初診時から2ヶ月半で正常化、糖尿病は4ヶ月半で正常化しております。
一方、脂質の方に目を向ければ、LDL-Cは(初診時7/31)125→(10/13)125→(12/18)133mg/dlと上昇し、HDL-Cも(初診時7/31)46→(10/13)49→(12/18)50mg/dlと上昇しております。
(初診時7/31)のLDL-C/HDL-C比は2.72で、(10/13)では2.55、(12/18)では2.66と糖質制限をしたことによって、L/H比は改善しており、脂質プロファイルとしては有利な方向に行きました。
この患者さんは、最初から朝、昼、夕の3食の食事から、炭水化物をすべて排除しましたが、低血糖を思わせる症状もなく、すこぶる元気そうで、活気に満ちております。
炭水化物の過剰摂取が生活習慣病を起こすことを理解していただき、強固な意思で自分を律しながら糖質制限を続けていただいたことによる成功例だと思います。
これからも末長く糖質制限を続けていただきたいと思います。
コメント
コメント一覧 (2件)
昨日は有り難うございます。
先生に指導された事を実践します。
昨夜から糖質、炭水化物抜き始めました。
健康な体に戻りたいので、これからも指導御願い致します。
コメント頂きありがとうございました。
これからも頑張ってください。
第51回ブログから糖質制限の具体的な方法について載せていきますのでご覧になってください。